エキップ株式会社
  1. 暖房パネルで足元ぽかぽか!『暖カウンター』
  2. 開発エピソード
開発エピソード
暖カウンターができあがるまで

もともと私は京都で父が創業した水や空気を送る設備機械のポンプやファンを扱う会社におりました。
そこで技術サービスの営業をしながら、省エネや環境に関連した商品を手掛ける方とのご縁で、さまざまな面白い商品を取り扱うようになりました。それが平成10年くらいですから、当時は本当にまだまだ省エネや環境というキーワードもあまり聞き慣れず、当社が扱う商品も物珍しいせいか、あちこちで結構お声がかかり、わりとスムーズにこの事業での売上もそこそこ見込めるようになりました。
反して、本業の設備機械のほうは少し厳しくなり始めていたので、その分の落ち込みもカバーできて助かりました。

その商品とは、『節水弁(コマ)』、『セラミック活水器』、そして『省エネ型PTCフィルム床暖房』etc 今ではほんとにどこでも出回っている商品ですが、当時は取り扱う会社もそれほど多くなく、安い商品でないにも関わらず、私の懸命の提案を聞き入れてくださり、取り扱っていただけた施設のお客様には本当にありがたかったです。その中の『省エネ型PTCフィルム床暖房』が現在の「暖カウンター」のきっかけになったのです。

暖カウンターが出来上がるまで
暖カウンターが出来上がるまで
分かりやすくて便利、そして長く愛される商品を…

「省エネ型PTCフィルム床暖房」は、PTCという自己温度制御特性を持った発熱するカーボンインクが印刷された薄いフィルム状のヒーターです。なんと、その厚みはわずかに0.3mm。めっちゃ薄いです。
まわりの温度が下がるとフィルムの温度は上がり、逆に温度が上がるとフィルムの温度は下がるというインバーターのような特性を持つため、低出力で安定し電気代は本当にお安いのが絶対的な特徴です。

これを床材にはさみこむだけで床暖房になるため、リフォームにも最適な手軽で便利な商品としてお客様にも良いご評価をいただいておりました。クラッカーでもその頃よりだんだんと世の中では省エネや環境というキーワードも高まり、類似の床暖房システムも次々に現れ始めました。その他に扱っていた水関連の商品も、なんだか似たような商品で効果もなんだか?そうなものも出回り始めてきました。珍しいもの、面白いもの等はなんでもそうかもしれませんが、すぐに似たようなものがどんどんできてはあふれ、そのうちに陳腐化していくんでしょうかねー。そんな流れに納得できなかったというか、反発というか、先行き不安というか、結局のところ満足していなかったんでしょうねー、これではだめだなーと強く思うようになってきました。

そうです!「誰が見ても分かりやすく、そして便利だからたくさんのいろんな場で親しまれて役に立つ、だから息長く愛されるような商品があればなー、というか自分で創ってみたいなー」という強い想いがフツフツと現れてきました。

分かりやすくて便利、そして長く愛される商品を…
創れるかも?

その後も省エネを謳った同じような床暖房は続々と発売されて、「またか…」と少しマンネリ的な感覚を持ちながらも、この画期的なヒーターの機能が床暖房以外に使われていることが少ないのはなぜだろう?と不思議でした。
インターネットでも特許関係の検索はできるので、自分なりにもいろいろと調べてみましたが、床暖房以外にこれといった用途での応用商品は見当たりませんでした。
そして、いうまではありません。
「ん…? これは、何か創れるかも…?」
こんな単純な発想が「暖カウンター」開発のきっかけでした。



よし!ならば自分が…

「何かつくれるかも!?」的な感覚から、少しずつ具体的になってきたヒントは、お世話になっている飲食店のお客様先から以前伺った「空調暖房をもっと強くできないか?足元がどうしても寒い…」という内容を思い出したことでした。当時は現在のエキップもなく、母体の田中ポンプ(設備機械を扱っています)という会社にてお客様の設備環境の改善などをご提供しておりましたが、室内の上下の温度差による足元の冷気はどうしようもないものなのか?ともどかしく感じていたことを痛烈に思い出したのです。そこでいざ、いろんなお店に行って注目して見てみると、実際のところエアコン暖房では賄えない部分としてお客様に毛布を貸し出したり、足元に小さなストーブやファンヒーターを置いたりしているところがほとんどでした。
見事に足元専用の暖房機器たるものを使っているところはまったくといってありませんでした。「そうかー、これかー!」「よし!ならば自分がPTC床暖房を応用し、足元専用のヒーターを創ってみよう!!」これが始まりでした。2005年の話です。

まずはカタチから…

思い立ってからというもの、実際に何からどう始めたらいいのかってなかなか分からず、なんでもそうですが子供の頃から何をするのもまずは格好(カタチ)から的な要素を持っておりましたので、今回もやはりカタチ、すなわち名前かな?というまたもや安易な方向からのスタートでした。
結構自分でいうのもなんですが、こだわるほうで信念もって取り組んできたものが後からの権力か何かであっさりと持っていかれるというか、自分の思いの影が薄くなるというのが何よりも嫌いでした。だから今回も迷わず、まずは名前です。
いろいろと考えようと思いましたが意外にあっさりと、暖かいカウンターということで「あったかいかうんたー」→「あったかかうんたー」→「あったかうんたー」!…という感じで決めました。
あとは自分でも特許庁のネット検索を駆使したうえ、弁理士さんにもお願いして晴れてこの「暖カウンター(あったかうんたー)」の名前が誕生しました。「暖」をつつむ暖かい空気の循環をイメージした輪から始まり、カウンターという少し事務的な並び方をイメージした自体を組み合わせたロゴも誕生しました。



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ビックリした1軒で確信したこと!

商品名が決まったところでいろいろな思案が始まりました。まずは調査という名目でいろんなお店に行ってはチェックし、暖房方式を確認したり、チャンスがあれば「暖カウンター」的なものを見られたことや聞いたことがあるかないかと聞いたりしました。
もちろんネットや業界誌なども調べた結果、自社のイメージしている商品や似た商品は、、たった1軒を除いてありませんでした。その1軒とは?これには正直冷や汗でした。
プロトタイプもできあがり、発売前のPRをして「できたら取り付けるよ」といってくださっていたお客様からの一言でした。
「祇園の○○さんのカウンター下、めっちゃ暖かかったし、なんか付いてるんちゃう?」○○さんは祇園でも超有名なお肉割烹のお店で、僕も何度か行かせてもらってオーナーさんとも何度かあちこちでお話したことがありました。
「まさか…?」とドキドキしながら叫び、でもしっかりと現状を確認せねばということで予約をいれてお店に行ってみました。そして確認したところ、ほんとにカウンターの下はしっかりと暖かいのです! 失礼でない程度に下を覗きこんだところ、何もついている気配はなく分厚い木の板そのものが暖かいのです。終始気になりながら、考えながらもやっぱり美味しいお料理はしっかりといただきました。
気安いオーナーさんなので、チェックがま口財布の際に洗いざらいお話し、お店のカウンターがなぜ暖かいのかを教えてもらいました。すると驚くべきお言葉が!それはなんと、30年前のお店設立時にスウェーデンからの輸入品を当時販売していた某大手電器メーカーから仕入れて取り付けたというのです。分厚い木の腰板全体にヒーターが埋め込まれている重厚なつくりのシステムということでした。当時のお値段はビックリするくらい高く、今も月々のランニングコストは相当なものらしいですが、長年お客様に評判がよく、喜んでいただけることには変えられないとのお話でした。
逆に「今はどこを探してももうない!」ということで大事に使って重宝されているとのことでした。もちろんその1軒以外には、その後もまったくお目にかかることはありませんでした。自分達の「暖カウンター」もこれらの経験により、今の現状で世の中に出回っている可能性は少ない!確信し自信をもつと同時に、30年もの長い期間にわたってお客様に大切に愛される商品を目指して、ますます頑張りたいと思いました!

今後を見据えて

当時にひらめいて、こんなものがつくりたいともがき、なんとか念じて思ったものが完成し、ありがたいことにたくさんのお客様に使っていただけて、こうして今を迎えさせていただいております。本当にありがとうございます。これからはさらに、この「暖カウンター」をもっと世の中に普及すべく、しっかりと努めてまいります。大震災、原発事故、電力不足、と厳しい現実が我々を取り巻いております。目の前に迫る、夏の電力不足。いろんな節電対策が取り立たされておりますが、事実、夏だけではございません。実際は冬の暖房のほうが電力はかさんでしまいます。
今度はエアコンの温度を上げ過ぎないような各自の節電工夫に加えて、効率的な暖房のためのいろんなノウハウや製品も登場してくると思われます。
これまでのように、とりあえずスペース全体を暖めるような大規模な暖房感覚は薄れていくでしょう。
寒い人は暖をとる、移動したり動いたりしている人は必要ない、といった目的や場所に応じたエリア暖房、スポット暖房という感覚がそれに変わっていくと思います。例えば、駅構内。改札など人が動き、行き交うところは除き、待ち合わせ場所やリラックススペースなどを集中的に温める方法。もともと天井は高く、だだっ広い空間を全体的に温めようというのがそもそも無理。そのためには当社の「暖カウンター」はじめエリアごと、スポットごとに集中して温められる設備の需要は増えていくものと思います。当社でも今後を見据えて、商業施設やさまざまな人が集まるスペースの設備に対応できるよう、電圧を変えるなど、新機種の開発と製作に着手しております。